新たな電力会社やプラン、再生可能エネルギーなどを調べているときに見かける「グリーン電力証書」。
この証書は、CO2などの温室効果ガスを排出しない再生可能エネルギーによって発電された自然エネルギーの価値を取引できるように切り出した証書です。
この「グリーン電力証書」が発行される仕組みはどのようなものなのでしょうか?また、同じく環境価値を切り離し、証書として発行している「J-クレジット」や「非化石証書」とは、どのような違いがあるのでしょうか?詳しく解説していきます。
グリーン電力証書とは?
グリーン電力証書とは、太陽光・水力・風力・バイオマス・地熱などの再生可能エネルギーから発電された自然エネルギーから、「発電時に温室効果ガス(CO2)を排出しない」「化石燃料を削減し、省エネルギーに努める」「エネルギーの安定供給に貢献する」などの環境価値を、取引ができるように切り出した証書です。
(出典:グリーン電力証書の概要について|一般財団法人 日本品質保証機構)
この証書を購入し、使用している電気と組み合わせることで、環境に優しい価値を持つ電気を使用していると見なすことができるのです。
グリーン電力の種類
グリーン電力証書制度で認定されている主な発電方法は以下の5つです。
太陽光
発電効率 | 約20% |
メリット | 屋根の上などに設置できる メンテナンスが比較的少ない |
デメリット | 日射量によって発電量が左右される 夜間は発電しない |
太陽の光エネルギーを利用して発電します。
日が当たる場所であれば設置できるため、太陽光発電の発電量は年々上昇しており、設備も増加傾向です。住宅の屋根に設置する家庭用太陽光発電の他、農地や空き地にソーラーパネルを野立てで設置したメガソーラー発電所も増えています。
水力
発電効率 | 約80% |
メリット | 発電効率が高い 大規模発電が可能 揚水式水力発電はピーク電源として活用 |
デメリット |
大型水力は建設費が莫大 |
水が流れ落ちるエネルギーでタービンを回し、発電する方法です。再生可能エネルギーの中でも80%という高い発電率で、ベースロード電源としても活用されています。
水力発電は大きなダムで行われているイメージがあるかもしれませんが、近年は小水力発電の開発・設置も進んでいます。
風力
発電効率 | 約30~40% |
メリット |
時間に関係なく発電できる |
デメリット | 常に風が吹く場所に設置する必要がある 騒音が発生する |
風の力で風車を回して発電する方法です。発電効率は比較的高い方ですが、遮るものがなく常に風が吹き、騒音の影響がない場所に設置する必要があります。
近年では、強い風が安定的に受けられる洋上風力発電の開発が進められています。
地熱
発電効率 | 約20% |
メリット | 発電量が安定している 発電後の熱水は温泉として再利用できる |
デメリット | 地質調査や開発に時間とコストがかかる 自然環境や地域産業に影響が出る可能性がある |
地下のマグマから得られる熱エネルギーや蒸気でタービンを回して発電する方法です。天候や時間に左右されない安定的なエネルギーであるため、注目されています。
日本は火山帯国であり、世界的にも地熱エネルギーが豊富ですが、開発・建設にコストがかかることから、十分に利用されているとは言えません。
バイオマス
発電効率 | 約20% |
メリット | 廃棄物を活用できる 既存の火力発電設備を転用できる |
デメリット |
バイオマス燃料の収集・運搬・加工にコストがかかる |
間伐材・廃材・家畜の排せつ物・食品廃棄物などの生物由来の有機資源を利用した発電方法です。
燃料が化石燃料ではないというだけで、仕組みは火力発電と同様なので、老朽化した火力発電所を転用する場合もあります。
小規模なバイオマス発電所は、地域で出る間伐材などを有効利用し、エネルギーの地産地消を促進することが可能です。
グリーン電力と再生可能エネルギーの違い
「グリーン電力」は、太陽光・水力・風力・バイオマス・地熱など、自然を利用した「再生可能エネルギー」で発電した電力のことです。
再生可能エネルギーとは、枯渇せず、何度でも繰り返し利用できるエネルギーのことを指します。
つまり「グリーン電力」と「再生可能エネルギー由来の電力」は、同じ意味と考えていいでしょう。
グリーン電力証書の仕組み
グリーン電力証書は以下のような流れで利用されています。
グリーン電力を発電した事業者が、環境価値のみを切り離した「グリーン電力証書」を発行・販売します。
グリーン電力証書を購入した企業や自治体は、化石燃料由来の電力であっても環境価値を付与することができ、環境に優しい電力を使用していると主張することができます。
環境価値とは?
グリーン電力には、電気そのものの価値に加えて、「CO2排出量ゼロの環境に優しい電気」という価値があります。この価値を「環境価値」と呼んでいます。
グリーン電力証書を導入する目的
グリーン電力証書が導入された目的は、再生可能エネルギーの普及促進です。
「グリーン電力証書」は、購入することによって、環境価値そのものを買い取ることが可能です。企業・自治体が購入できます。
「グリーン電力証書」を発行・販売することにより、さまざまな会社・企業に環境価値を提供し、電気自体の売電収入以外でも利益を得ることができます。
より多くの企業・自治体、家庭の自然エネルギーへの興味関心や環境意識への高まりや、CO2の削減と環境改善などに貢献することができます。
発電事業者が「グリーン電力証書」を発行・販売するメリットとデメリット
まずは、発電する側がグリーン電力証書を発行するメリット・デメリットについて解説します。
メリット
- 電気の価値だけでなく環境価値分の収入を得られる
- 再生可能エネルギーの発電設備を維持・拡張できる
環境価値をグリーン電力証書として発行・販売することで、電気そのものの価値以上の収入を得ることができます。
収入が増えれば、再生可能エネルギーの発電所を安定して運営することができます。さらに、規模を大きくして発電コストを抑えることも可能でしょう。
デメリット
- 相場の変動で値下がりするリスクがある
- CO2削減に貢献していると主張できない
グリーン電力証書の価格は需要と供給のバランスによって変動するので、売却時に値下がりする可能性があります。
また、グリーン電力証書として環境価値を販売した後は、再生可能エネルギーで発電し環境保護に貢献していると主張することはできません。その権利は、グリーン電力証書の購入者に移っているためです。
会社・企業が「グリーン電力証書」を購入するメリットとデメリット
続いて、グリーン電力証書を購入する側のメリット・デメリットについて解説していきます。
メリット
- 設備投資せずに環境保護に貢献できる
- 企業・団体の社会的評価が向上する
- 企業価値が向上しESG投資の対象となりうる
「グリーン電力証書」を購入することによって、国内における自然エネルギーの普及や地球温暖化の抑制など、環境改善の活動のひとつとして貢献することができます。
自然エネルギーは発電時に温室効果ガス(CO2)を排出しないため、「グリーン電力証書」を所有することによって、記載されている毎月の電気使用量(kWh)分を自然エネルギーから発電された電気を使用していると見なすことができます。自主的なCO2削減目標達成に活用することが可能です。
「グリーン電力証書」を購入することによって、環境改善に貢献しているという意思表示をすることができます。更には、企業広告やPRなどに活用することも可能です。
CDP(カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト)、RE100、日経環境経営度調査などの各種環境報告書に、再生可能エネルギーの使用量やCO2削減量として報告することができます。
近年では環境・社会的に貢献している企業に投資する「ESG投資」に注目が集まっているので、経済的なメリットもあると言えるでしょう。
デメリット
- 国の認証を受けていない
- 発行量が少ない
- 販売価格が高い
グリーン電力証書を認証しているのは日本品質保証機構という民間機関なので、グリーン電力の環境価値は法的な保証がなく、省エネ法や温対法に適用していません。
CO2の削減効果について法的な保証を得るには、資源エネルギー庁と環境省が運営する「グリーンエネルギーCO2削減相当量認証制度」により認証が必要です。
また、グリーン電力証書の発行量は、同じような性質を持つ非化石証書やJクレジットに比べて少なくなっています。さらに、1kWhあたりの単価も高く、購入のハードルが高くなっているのが問題点です。
種類 | 価格(/kWh) |
グリーン電力証書 | 7円 |
Jクレジット | 1.38円 |
非化石証書 | 0.4~0.8円 |
グリーン電力証書はEV補助金申請時にも使える!
環境省の令和2年度第3次補正事業では、再エネ100%電力調達がEV補助金の申請条件のひとつとなっています。
GreenCartでは、グリーン電力証書をwebで購⼊し即時発行が可能です。
ご家庭で使う電力を再エネ比率100%にするためには、自家発電・再エネ電力メニューの購入・グリーン電力証書(再エネ電力証書)の購入の3つの方法があり、組み合わせて利用できます。
「グリーン電力証書」とは消費する電力量と釣り合う証書を購入することで環境にやさしい価値を持つグリーン電力を使っていると見なす制度なので、必要な電力量分を購入すれば、再エネ100%電力調達の条件を満たせます。
購入できるグリーン電⼒の電力量は、1,000kWh以上1kWhから指定できます。
もちろん、個人の方でも購入可能です。EV補助金の申請に役立ててみてはいかがでしょうか?
「グリーン電力証書」はどんな事業者が発行している?
「グリーン電力証書」は、発行している事業者によって価格が異なり、大量に買えば買うほど安価になる傾向があります。
基本的に、いくらで取引がされているのかは発行している事業者に問い合わせる必要があります。
証書発行事業者(2023年6月30日時点)
- 日本自然エネルギー株式会社
- サミットエナジー株式会社
- グリーナ株式会社(旧ネクストエナジー・アンド・リソース株式会社)
- 横浜市
- 公益財団法人 東京都環境公社
参考:一般財団法人日本品質保証機構 証書発行事業者(申請者)一覧
一部抜粋していますが、グリーン電力が36事業者・グリーン熱が3事業者認証されています。どのような活用方法をしているのか、日本自然エネルギー株式会社を一例に見ていきましょう。
日本自然エネルギー株式会社
日本自然エネルギー株式会社の「グリーン電力証書」は、日本全国のグリーン発電所から発行されています。グリーン電力証書を発行している日本自然エネルギー株式会社が、グリーン発電所と契約を結び、環境価値を買い取ってグリーン電力証書を発行します。
出典:グリーン電力証書システムとは?|日本自然エネルギー株式会社
グリーン電力証書の購入方法
グリーン電力証書は、グリーン電力証書発行事業者に発行を直接依頼して購入します。簡単な流れは次の通りです。
- STEP.1問い合わせグリーン電力証書発行事業者に、グリーン電力証書発行について問い合わせを行います。証書発行事業者(申請者)一覧から選び、WEBや電話から連絡してください。
- STEP.2契約内容の確認事業者から、電力量・契約期間・発電種類・単価など、契約内容について説明を受けます。約款についても確認しておきましょう。
- STEP.3契約グリーン電力証書発行の契約を締結します。小口契約の場合、契約書の記入・送付がWEB上でできるところもあります。
- STEP.4マーク画像送付・グリーン電力証書受領契約後から、グリーン電力証書のマークを企業や自治体のPRに使用できるようになります。契約内容が記載されたグリーン電力証書も送付され、表示が可能です。
「J-クレジット」「非化石証書」との違いとは?
「グリーン電力証書」以外にも、環境価値を取引するための証書・制度は「J-クレジット」「非化石証書」の2種類があります。どのような違いがあるのでしょうか?
「J-クレジット」とは?
「J-クレジット」とは、省エネルギー機器の導入や森林経営などの取り組みによる、CO2を含む温室効果ガスの排出削減量や吸収量を「クレジット」として国が認証したものです。
「J-クレジット」として、国がCO2などに温室効果ガスの排出削減量や吸収率を承認している制度を「J-クレジット制度」と呼び、温対法での報告やカーボン・オフセット、低炭素社会の実現など、種別によってさまざまな活用先があります。
「非化石証書」とは?
「非化石証書」とは、再生可能エネルギーなどの非化石電源から発電された電気から環境価値を切り離し、証書にしたものです。主に、2018年からはじまった「非化石価値取引市場」で取引を行うために発行します。
この証書は、太陽光・水力・風力などのFITが適用する方法で発電された電気への証書である「FIT非化石証書」、卒FIT後の再エネ発電や大型水力発電などの方法で発電された電気への証書である「非FIT非化石証書」の2種類があり、小売電気事業者のみが購入することができます。
まとめ
「グリーン電力証書」について、解説をしました。
この証書は、太陽光、風力などの自然エネルギーから発電された電力から「CO2などの温室効果ガスを排出しない」という環境価値を切り離し、取引をするために発行した証書です。
環境改善やエコに興味関心が高まる中、自然エネルギーの利用価値が評価されつつあります。電気も温室効果ガスを発生させない自然エネルギーから発電されたものを使用したいと考えている方も多くなることが予想され、ますます「グリーン電力証書」による環境価値の取引に注目が集まるのではないでしょうか。